「お客様の中にお医者さまはいらっしゃいませんか」で手を上げない医者の理由

このまとめや関連するツイート読んでて思ったこととか。→


医療従事者が語る「善きサマリア人の法」立法の必要性と、司法関係者への不信 - Togetterまとめ http://togetter.com/li/832036 

「お客様の中にお医者様はいらっしゃいませんか」コールは何回か経験している。
名乗り出る人はそれなりにいると思う。
役に立てることがあるかもしれない。
 
名乗り出ない人もいると思う。
訴えられたら?訴えられなくても世間に晒されたら?
今は乗客としているんであって、仕事じゃないしね?
 
別にどっちがいいというものでもないし、名乗り出ないことで世間様から怒られたり、職業としての怠慢を言われる筋合いはないと思う。
一応おずおずと名乗り出てはいくけど。
 
名乗り出ない気持ちとしては、「人の命を救うのが医者では?つってもこういうときは無償だし、なんでも善意を無料で使うのはアカンでしょ。人を救えば美しい話になるって言われても知らんがな。善意で救命しようとしたけど救えなくて社会からボコボコにされたときは誰か守ってくれるんですか。」つうのはあるよね。まだ日本でそれで訴えられた医者はいないんだけどもさ。
あと、ほとんどトリアージ程度のことしかできることはないと思う。医療機器もマンパワーもないから。
 
一方で、医師側には訴訟や紛争に関して、マスコミや司法、モンスターペイシェントにぬぐいようのない不信感がある。大淀病院という病院で妊婦が脳出血で死亡した事例、マスコミは「6時間放置」「たらいまわし」という見出しで報道したし、「当直医が途中居眠りしていたらしい」という噂があったのを覚えてるし。

不幸な事例のその裏に受け入れ不能な状態があるとか、どういう事情があるのかは報道されない。報道されたとしても医療への不信が植えつけられた後。医師同士の学習会では、「とにかくマスコミには気をつけてください。全てを潰されます」と注意の呼びかけがあったりする。事実どころか関係のない私生活まで暴かれる。日常で「何かあったら訴えてやる」と言われることがある。だから、前述のように、公共交通機関で求めに応じて医療行為をしてその結果で訴訟になった事例は日本では今までないんだけど、ありそうだからやだなっていう心情はわかるし、海外では存在する。

 
あとはすまん、司法のことについて詳しい医者がどれだけいるのかなって問題もある。とかく司法の考え方はわかりづらい上に、自分たちを守ってくれるらしい法がどれだか知らなかったり。そういう、わからない、知らないことへの漠然とした恐怖というものもあると思う。
 
いろいろググってたら調べて発表してる人はいらっしゃった。名乗り出ない理由やそこに横たわる問題などが法律と絡めて論じられていてクッソ長いけど興味深い。
航空機内での救急医療援助に関する医師の意識調査〜よきサマリア人の法は必要か? http://plaza.umin.ac.jp/GHDNet/04/samaritan/
 
ただし、「JALANAはドクターズキットの公表、訴訟になった際は弁護士費用をもつなど保護を表明」っていうのは両社のサイトを見ただけではどこにも記載なしで不明。あと、気管内挿管セットあったところで、1人で挿管できる医者がどれだけいるのかとは思った。少なくとも私はできない(断言)
 
よきサマリア人の法とかいうのを作ったら訴訟が起こらないのかどうかは知らんけど、今のところ日本でそういう訴訟は起きていない。起こるかもなとは思っているけど。でもどこで医療行為しようが訴えられるときは訴えられるわけで、そのリスクはゼロにはならないのよねしかし。
だからまあ、名乗り出るかどうかは個人の自由だろうし、出なくてもいいんじゃないすか。リスクはどんなにしてもゼロにならないけど、ゼロにならないと行動できない人もいるだろうし、そのへんは理屈だけでどうにもならんところもありますしの。良し悪しとかでもない。ここら辺がまあそうだよなと思うし現実な提案だと思う