産婦人科の治療のお話

患者さんに、「先生だったらどうしますか?」ときかれることがある。

医学的にほぼ答えの出ているようなときは、別に私だったらどうするかなんてあんま関係ないけど。と頭の中で思いつつ、「そうすね、こうするかな」というお話ができるのだけど、産婦人科の治療の方向性というのは実に厄介で、今すぐ治療しないとヤバいっす!というものから、総合的に判断して1~2年以内くらいでどうするか決めていきますか、みたいなのんびりしたのまで病状が様々。

筋腫が手術するほどの大きさじゃないけど、30代後半でこれから妊娠したい人。手術したらしばらくは妊活ができない。お産は帝王切開になることが多い。治療しなくても妊娠できるかもしれない。でも治療したら妊娠するのかもしれないけど、もしかしたら妊活できなかった期間の分、卵子の老化が進むからそのせいで妊娠できないかもしれない。100%のお約束はできない。妊娠しなかったのは他にも理由があるかもしれないし。

生理の量がヤバい。夜用ナプキンにタンポン使っても1~2時間しかもたない。どうにかしたいんですけど…。
仕事や家事や日常生活に支障はあるか。学生であればテストや授業に支障はあるか。月経前症候群や、生理痛はどうか。今後の妊娠についてはしたいかしたくないか。年齢や元々他に病気はあるか。
ピルなら生理の量は減ってきっちり出血が始まるので、スケジュールは立てやすい。避妊もできるし月経前症候群にも効果はあるけど、血栓のリスクはある。
IUSという避妊リングの一種も使えるけど、経産婦じゃないと、特に若年だといれるのが痛いかも。
生理止める方法もあるけど、更年期症状が出てしまってつらくなったり、あと治療代がクソ高い。

その他にも、子どもが受験を控えていたり、朝早く起きるから、眠くなるような薬は困る。介護をしているから入院はできない。ピルや抗不安薬は怖いんで、漢方なら…とかいろいろいろいろありすぎて、「私だったらどうしますか?」っていうのはあんま参考にならないんだよね。私はあなたじゃないし、ものすごく時間をかけないとその人のライフスタイルとか大切にしているものとかわからんし。

それよりも、あなたが一番困っているのはどういうことで、どういう治療なら受けてもいいと考えているか。経済状況の問題もあるし。それを主治医に伝えてみていただけるとこれ幸い。そしたら手持ちのカードからいくつか選んでもらえるから。

「ピル推進」「IUS(ミレーナ)推進」とかそういうのはないの。それしか知らない人はカードは一枚しかないけど、あなたがどういう人か知ってから、あなたに合わせた治療をしていきます。それが産婦人科医のお仕事。投薬なしでお話だけして帰るもあり。
なんかたまに「いや全然この人ピルだけすすめてるわけじゃないでしょ」という先生がなぜか「推進派」としてまとめられてたので書いた。

じゃ、また気が向いたらブログ書きますわ