ざっくり言うと、医者の勧める治療を選択しなくても、困っている症状は抱え込まずどうにかしてくれと言ってよい

私は一般の産婦人科に勤めているので、悪性疾患ばかり診ているわけではなく、そのような方はその都度関わるかんじです。

 

研修医の頃に最初に関わった末期の方は子宮頸がんでした。昔々、同じ病気の患者は入院や手術の説明を複数まとめて行っていたため、プライバシーも尊重されず、人間として扱われていない!と怒りを感じて最初の治療の段階で病院を離れ、温熱療法や食餌療法など民間療法をしている間になすすべもなくなってしまった方でした。

その後信頼できる医療機関に出会ってからは可能な治療は行いつつ、以前の経験をもとに人間らしい扱いを受けることがいかに患者にとって大切か、民間療法に費やした時間や諸々がいかに無駄だったか、でも医療者のせいでもあるんやでということを医療者を含めていろんな方にお話をされている方でした。ハキハキと思ったことを言う方だったのですが…。

 

尿管が癌に蝕まれて尿を出すことができず下半身はバンバンにむくみ、背中から腎ろうというチューブを腎臓につないで尿を出していました。

最後の方は動くのも困難になり、ちょっとしたことも自由にできなくなりました。

そんな時、少し担当医への愚痴をこぼされたので「そんなことなら、どんどん言ってくださいよー」とかるーく言った私ですが「患者はね、言えないものなのよ」と返されたことがあります。

そうか、バンバン医者に物申してると思ってた患者さんでもそれか…というのがずっと頭に残っていることでした。

 

時は流れて20年経ち、癌の手術はだいぶ渋っていたもののなんとか説得して治療した方がいて、術後はもともと腫瘍が専門のボスが外来担当医となったのですが、抗がん剤は使いたくないとのことで徐々に病状は進行(なお抗がん剤を使ったとしても完治するわけではない状態)していました。外来で会うことはありませんでしたがどうされているのかはカンファレンスでも聞いていましたしボスもそれなりに医師、患者関係は普段から良好な人なので、うまくいっていると思っていました。

訪問看護のスタッフに「ボスが嫌というわけではないけど、前に担当してもらってた医者に会わずに死んでいくのは嫌」と私たちに会いたいという希望が出され、お話をすることに。

 

いろいろ話はしましたが、その中で、「今困っている症状があるのだけど、抗がん剤放射線治療も断ったので、断ったくせにいろいろ言うんじゃない、とボスに言われるんじゃないかと思って困っていることについては伝えていない」(名誉のためにいうとボスはそういうことはまず言わない)と言われて、

こっちの提示する治療はまあ最善と思って勧めているものの、100%治りますよ!的な状態ならともかく、そうでもない場合は状況に応じて選択するのは患者だし、それをサポートしていきますよ、という医療者の姿勢は全く伝わってないのはあかんやんけー!と思った次第でした。

 

癌に限らず、いろんな場面で医者の勧める治療を断って別の方法を選択することはしばしばあると思いますが、それでいいんです。うまくいかないことはありますが、その都度こちらは患者の抱えている問題を納得する形で提供したいと思っています。

例えば、ピルを勧められたけど合わなかった、でもそのことを言いづらい、もう病院に行きたくない…では本末転倒で、合わない、よしわかったじゃー別の方法でやってみましょう、これはどうですか的なやりとりで治療は行われていくわけです。

この治療で行ってみよう!つって始めたものの、意外と副作用で早々に断念、勧めたこっちも「あーすいません…」となることもあります。

長々語ってきましたけど、タイトルまんまで、医者の勧める治療法を選択しなかったからといってそれを後ろめたく思う必要はない、症状が良くならない場合は大きな声でそれを伝えてもいいんだ、ということです。

新型コロナに関する里帰り分娩拒否の報道ですが

https://twitter.com/yahoonewstopics/status/1253322297001127937?s=21

千葉から岩手に帰省した妊婦が破水したが受け入れ拒否に遭ったという報道。

 

はじめに

妊娠がわかって産婦人科に受診する際、産む施設をどこにするのかはたいてい初診時から予定日が決まるくらいまでに確認されます。

自宅近くの産科にするのかや里帰りなど。里帰りの場合、イレギュラーなことがなければ妊娠34週くらいには里帰りを完了して、それ以降通院してくださいねとしているところが大半。里帰りしてしまえばそれ以降は遠距離移動はしないでもらいます。陣痛きたり破水すっかもしれんしね。

 

分娩予約は、周産期医療が瀕死の状態であり、数の制限をしている施設も多いことから、予定日が決まったあたりで里帰り希望の妊婦さんには希望の施設を探し、連絡して予約を取るように促しています。

お産は前述のような段階を経て予約され、数が把握されており、里帰りのように複数の施設で診察される場合お互いの情報共有をしています。

送り出す施設は受け入れ先が困らないように重要な事項や検査項目について伝えています。

 

そして、今回新型コロナがパンデミックとなり、日本産婦人科医会や学会では里帰りは推奨しない、強制はしないが里帰りを止めることも選択肢としています。

https://www.jaog.or.jp/news/news20200421/

里帰り分娩をする場合、無症状でも感染力を持つらしいこと、スタッフや他の患者さんへの影響も考え、2週間ほど里帰り宅にこもってやはり症状のないことを確認してから受診をお勧めしていることが多く、ということは、今までより2週間ほど、妊娠32週くらいで里帰りしている必要があります。

 

今回の新型コロナの流行を受けて、各自治体の産婦人科ではどういう症例をどれくらい受けられるか、どういう分娩方法を選択するかなどの対応に追われ、それらを決定してきています。シュミレーションや手術部や麻酔科医など関係各所との話し合いを短時間で迫られた病院もあります。

すでに崩壊していると言われている周産期医療にもう一つ難題が降りかかることになりました。

 

さて、今回のニュース、はじめのニュースを読んだ限りの情報で得られることは「岩手に帰省していた妊婦が破水しそうになったので救急車を呼んだが、まだ帰省して3~4日程度しか受け入れを断られた」こと。

妊娠週数などの情報はなし。

なので全然なにをどう判断すべきかわかりかねました。これだけしか情報がないと激おこする人もいるだろうなと。

 

その後の情報収集で

・妊娠35週であったこと

・元々岩手で分娩する予定ではなく、千葉で分娩する予定の妊婦であった

ことがわかりました。

 

つまり、通常の里帰り分娩ではありません。

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断ったとされる病院に、自分が勤務していたとします。

救急隊から早産の妊婦の破水の連絡が入り、COVID-19流行地域から移動して数日の妊婦であること、本来の里帰り分娩とは違い、単なる「帰省」の状態であったことが伝えられたとします。

 

無症状でPCR陽性になる事例はかなり報告されていますから、今、周産期の現場はかなりピリピリしています。

自院で感染が拡大したら、その他の妊婦さんを転院させる必要も出てきます。1人の妊婦のために、数百人のスケジュールを移動させる必要も出てきます。そして、感染流行地域から来たとなると、陽性と考えて行動することが迫られます。いつかその日がくると覚悟していても恐ろしく大変です。

それがいきなり破水での救急隊からの電話。

かかりつけでもなく感染症の有無も赤ちゃんの情報もなにもわからない状態。

かつ、僻地では一つの病院がその地域の最後の砦となっているパターンが多い。そこで分娩できなければ妊婦が路頭に迷います。

 

分娩室は空いているのか、そこは他の人への感染を防ぎ得ることが可能か、手術室は空いているか、スタッフの合意は得られるか、新生児科医はいるか。生まれた赤ちゃんが新型コロナに感染しているかもしれない、お産後の部屋はどうなる。それらは自分の病院で産む妊婦を混乱させないか。今、自分のかかりつけ妊婦が分娩中だったら?

なお、多くの産婦人科では飛び込みの妊婦より自分のかかりつけ妊婦の方が優先されると思います。

 

そんな中、受け入れろというのもなかなかに難しいです。

ただし、妊婦さんそれぞれにいろんな事情がありますから、元々分娩する予定だった千葉から岩手に帰省したのか、そこは責められないと思います。しかし、断った医療機関を責めるのもどうなんでしょう。

 

https://twitter.com/kadotaryusho/status/1253278410970763264?s=21

非難ともとれるツイートが数千RTされ、この話題はトレンドにもなりました。

 

このブログは私個人のものであって、日本の産婦人科医の総意ではないということを初めに言っておきますが、未知の感染症に立ち向かう時、後世になれば間違っていたとなることもたくさんあるでしょう。症状もなく破水した妊婦の受け入れを断るなんて言語道断かもしれません。

しかし、こういったニュースを報じる際は、本来里帰り分娩の予定ではなかった妊娠35週の妊婦がなんらかの事情で新型コロナの発生していない地域に帰省していた、ひょっとしたら感染している可能性もゼロではない、受け入れを打診された病院は寝耳に水もいいところで、地域の産婦人科医療が数週間機能しなくなるかもしれない、どうする?という判断迫られたということも伝えるべきではないでしょうか。

単に「たらい回し」の事例ではなく、誰が悪いとかそういうことでもなく、

ただ、報道の仕方は情報を正しく伝えるべきではないかと。

 

産婦人科業界では、以前から「マタ旅」と呼ばれる妊婦の旅行、それにまつわるアクシデントに警鐘を鳴らし、不要不急の旅行はしないよう、あるいは一旦施設内に入ると出るのに時間がかかるテーマパークなどの利用も注意をしています。一旦アクシデントが発生するとその地域の周産期医療を崩壊させる可能性があるからです。母子を守るという職責からも特に矛盾しないと思います。

今回のことはそれのバージョンアップされてしまった事例というか…

 

世間がどれだけ怒ったとしても、私はこの事例に関わった医療機関のみなさん、お疲れ様でした、という気持ちでいます。

大変な時ですが、みんなでがんばっていこう。

妊婦のみなさん、新型コロナが落ち着くまで、里帰り分娩をする場合は分娩先の病院やかかりつけ医とよく相談しましょう。移動の制限もかかりますが、できれば専門家の意見に従っていただけると有り難いです。

女性のシモを語るコーナーに、生理中であるというスタッフのバッジは必要か

ざっくり言うと、デパートに女性のシモにまつわるコーナーができた

以前からタブー視されてきたそれらのことについて、オワコンと言われるデパートがなにか突破口を開きたいと思っている。なおスタッフは希望に合わせて生理中であることのバッジを試験的につけてみている

https://www.wwdjapan.com/articles/981032

 


強制でないにせよ、肯定的な意見はあまり見かけない。炎上を見越しての導入であろうが、そりゃそうだろうなと思う。

 


デパートに行って、まぁ生理でお悩みのことがあったとして、生理中ですっていうスタッフになにか尋ねようというより、「体調大丈夫ですか?」みたいなことが先に立つし(ヘルプマーク的な)、生理中であろうがなかろうが、経験者であれば困ることや聞きづらいことなどは大まかの予測もつくでしょう。売り場にいる以上それに対応できるスタッフでないといかんわけで。生理中にバッジをつける意味がよくわからない。結局、うわドン引き、ハラスメントにはならんのかという話題にはなるものの、売り上げに貢献するとかコミュニケーションが盛り上がるかというとそれはもう全然見込めないと思った方がいい。生理中に接客が厳しい、客や同僚に気を使わせてしまうほどに症状の強い店員はバッジをつける前に産婦人科を受診したほうがよい。

 


というわけで、生理ちゃんというマンガでも炎上しそう〜みたいなことは描いてあって、炎上盛り込み済みなんだな、炎上確信犯は一部にものすごい怒りを生むと思うけど、それでもやるんだな、ということと、

炎上しようがデパートではモノが売れないんじゃなんか奇策が欲しいんじゃ!というデパートの悲哀が最も感じられるニュースでした。

生理についてコミュニケーションはかる目的で生理中のバッジつけるって、は?意味不明という感想、そうでしょう。わかる。でも、生理痛やPMSについて啓蒙したところでデパートではモノは売れない。ということなんですね。

なお、理解は可能なものの、同調同意しているわけではないということは言っておきたい。

 


以上がウォッチャーとしての感想で、次は産婦人科医として。

 


生理についての悩みつらみは多岐にわたるものの、生理痛/月経困難、PMS/PMDD が二大巨頭になると思われます。

900万人が月経困難と言われるものの、治療者は6%ほどと報告されています。

http://www.endometriosis.gr.jp/non-member/kaishi/kaishi34pdf/26-sitei2.pdf

PMSも生活に困難をきたす人は20人に1人いますが、認知度は低く、ひたすらがまんしている人は多いと思われます。

http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=13

圧倒多数が苦しんでいる疾患なのに治療してない。

 


産婦人科医の啓蒙が甘い、受診したところで適切な治療に結びつかなかったというお叱りも日々痛感していますが、あまりに生理に伴う症状は病気だと思われていなさすぎる。

 


学生の頃は試験やプール、旅行に差し障り、教師や親の無理解にも接する。嘘つき呼ばわりされることさえある。

産婦人科が身近ではないので、当然社会人になっても通院するわけじゃない。というかそんな時間が取れない。休めない。でもつらい。集中力は切れるし能率上がらない。

パートナーのできるころ、子どもを産む頃に月経前に不調になる結果、八つ当たりをしてしまう。いつもなら気にならないようなことなのにブチ切れてしまう。あっと思った時にはもう遅い。どうしてこんなこと言っちゃったんだろう…後悔しきりな人をめちゃくちゃみてまいりました。暴力を振るってしまい、人間関係に取り戻せないヒビの入ることも。女性には、生理に伴う長年にわたるつらく苦しい時期があるわけです。

子宮内膜症はさほど知られてはいない病気ですが、生理痛から発覚することも多々あり、知らずに放置していた結果、卵巣摘出や不妊症、癌に進む場合もあります。

 


しかし、月経困難や生理前の症状、治療すれば今まで寝込んでいたのはなんだったのだもっと早く治療すればよかった!って人、産婦人科を受診していれば手術までは必要なかったかもしれないのに…不妊にならなかったかもしれないのに…という人もたくさんいるんですね。

八つ当たりに関しても痛みに関しても、自分もつらいし周囲もつらいわけです。八つ当たりを受け止める、生理の時は痛くて動けない、よって配慮するというのも愛情かとは思いますが、大切な人につらい思いをさせない、治療をするということも愛情ではないかなと思っています。

 


というわけで、生理についてコミュニケーションをはかるのはデパートでもどこでもいいわけですが、それに伴う病気もたくさんあるんだよ、産婦人科のかかりつけも若いうちから作っておくといいよ、受診しろ、というのも話題に盛り込んでいただけると幸いです。

そうはいっても信頼できる産婦人科ないじゃんという場合は、そのむねどんどん発言してほしいなと思っています。

救急車を不正利用する妊婦、マジでいるんすか問題

「陣痛時、妊婦の救急車不正利用、タクシーがわりの利用が救急医療を圧迫している!」という意見をツイッターで見て、「ずいぶん治安の悪い地域で勤務されてる先生なのかな…」とまず思ってしまった。

赤ちゃんを産んですぐに赤ちゃん捨てようとした産婦が、股からへその緒ぶら下げてダッシュして逃げた話とか、母乳好きのための風俗で働くおねえちゃんが常に母乳を出す必要があるため、妊娠しては子どもを捨てる話を聞いたことがあったので、そういう地域なのかなと。
そういう、一般的に考えてクレイジーな世界じゃないと、陣痛が来たらイージーに救急車呼んで産院に到着する妊婦というのは想像し難かったわけです。

通常、妊婦はかかりつけの産院があって、初期は4週ごと、最後は毎週通います。その中で、陣痛が来たら?破水の時は?救急車を呼ぶ時はどんな時?といったことについて妊婦と話し合います。夫が出張や夜勤でいないこともありますし、すでにお子さんのいる方では誰に預けるのかといった個別の事情にどう対応するのかは、結果的に安全なお産を守ることにつながるからです。つまり妊婦がどう産院にアクセスするかを把握するのも業務のうちと考えています。

そもそも、タクシーがわりというか、陣痛が来るまでになーんも対策をせず「陣痛きたんで救急車呼びます」といって来院した人を私は見たことがない。外来で「陣痛来たら救急車呼んでいいんですか」ときかれることはあるけど。
いや、そういう妊婦がゼロなわけじゃないだろうけど、救急医療を圧迫するほどの人数はいないと思うわ…。
どこの病院にも受診したことのない妊婦が陣痛きて動けなくなり、どこに行けばいいのかわからなくなって救急車呼ぶパターンはあるけど。タクシーがわりでもないし、不正利用でもないわな…。
念のため、ながらく周産期センターで働く助産師にもきいてみたけど、タクシーがわりに救急車使う妊婦の経験なし。友人の産婦人科医も複数の病院勤務経験あるけど、そんな妊婦はいないと。
当該の先生はよほどそのような妊婦に当たっていたのかもしれないのですが、あたかも妊婦の大勢に何も考えてない、対策も講じない方が多いかのような煽りで大炎上してしまった感があります。生活保護受給者や高齢者にも範囲を広げたのもあまりいただけなかったですね。

私は今、ド僻地の周産期センターでも働いているわけですが、ド僻地というのは過疎化が進んで産婦人科がどんどん減って、結果的に妊婦が通院する産婦人科がクッソ遠くなっています。近くに産める産院がない。そんで片道2時間とかかけて外来に来てる。
じゃあ、そういう地域でなにが起こってるかというと、車中分娩や、間に合わずその辺でお産になる事例の多発です。救急隊とスタッフで電話で指示しながら到着を待ち、新生児科医が蘇生キットを持って駆けつけるというのも稀ではなくなってしまいました。
ゆえに、問診で「これは間に合わないな」という妊婦は前もって計画分娩にしたり、近隣の施設で待機してもらって陣痛を待ったりしています。早産になりそうな妊婦は満期になっても退院せず陣痛くるまで入院とかもあり。車中分娩になった事例に対しては、担当医が「ちゃんとリスク説明したのか」「病院に来るまで何分かかるか確認しとったんか」とカンファレンスでつっこまれます。そこまでちゃんと仕事せいと。
今後、そういった救急車の利用は増えるだろうと個人的には思っています。そして、呼ぶのをためらうようになってはいけないとも思っています。
それが救急医療を圧迫するというのなら、救急のインフラ整備をするべきじゃないでしょうか。

ただし、この話、ガンガン炎上し、「陣痛で救急車呼んだっていいじゃん!」論も多く目にしました。とりあえず、妊婦はかかりつけときちんと相談しておきましょう。現場からは以上です。

死にたいと言われたときにド素人はどうしたらいいのか

ガチで死にたいと言われて、多分動揺しない人はいないと思う。

全く別の理由で会いに来ると思ってた知人から、「どうしたら楽に死ねますか」「どうして死ぬ方法を考えてくれないんですか」といきなり言われて、まず自分の思考が停止するのがわかった。楽に死ねる方法を仮に知っていたとして、教えられるわけがなかろう。かといってこの瞬間私はどんな言葉を口にすればいいのか。

 

精神科の教科書をみても、一般的なことは書いてあっても個別の対応なんて書いていない。
ので、いつか誰かの参考になればいいのだけど、と思って書くことにした。
医療者でなくとも理解不能な話ではないと思う。

 

とりあえず話をきくと、死にたくなるに十分だろう理由があった。
これはどんな言葉も響かず、虚しく消えていくだけだと確信した。大変だったねとか、つらかったねという言葉は滑っていくだけだ。

薬もたいして効果はないだろうと推測された。どれだけ寝ても絶望は記憶から消し去ることはできないし、目の前に横たわって動かないだろう。薬でどうこうできるレベルは果てしなく超えている。

 

それでも、何かアクションを起こすのが人情だろうなと思う。
リンクは、死にたいという人を見かけたら、という精神科医による記事。
やってはいけないことは、説教と議論。
https://www.buzzfeed.com/jp/satoruishido/toshihiko-matsumoto?utm_term=.jvY3VLLRWn#.qy8JZqq38O

 

まぁその人の場合、すでにきちんと精神科に通院していた。

今回感じたのは、身近な人による、現在の精神科かかりつけの否定、治療方針への不信を煽る言葉、勝手に転院や内服薬に干渉することのヤバさ。
これ、めっちゃ難治だったり原因不明の病でもみられる現象なんだけど、

 

・精神的に不安定な人に、現状についてさらに不安を煽る


・話を聴いて自分への依存をさせる。周囲から距離を置かせ、孤立させることで自分の影響力を高めていく


・現在のやり方を否定して治療のルートから外す

 

これ、かなり危険だと認識してほしい。
身近な人が死にたいと言っていて、何もできないことに無力を痛感する。わかる。
何か手助けをしたい。目に見える形で、成果を伴うものであって。わかる。

 

でも、あなたのすることは治療じゃない。
投薬などの「治療」は何もできないということを自覚して、それでもなおそばにいること。物理的なそばでも、心理的なものでもいい。
一見何もしていないように見えても、それがそばにいる人のできることで、死にたい人の求めていることなんじゃないかと思う。死にたいくらい辛いときに、それでも死んでほしくないという人が近くにいて、離れないでいてくれる。
その人が死にたくなくなったとき、あなたがそばにいてくれたことは、最大の「治療」になっているかもしれない。

 

そして、人は絶望からそうそうすぐに立ち直れるものじゃない。忘れることもできないのだから、「忘れよう」「なかったことにして今まで通りの生活を送ろう」というおすすめをしてはいけない。
今そこにある絶望に耳を傾けてほしい。
ときにそれはつらい作業になるだろう。そばにいる以外何もできないのだし、それで相手の死にたい気持ちが消える可能性はさほど高くないかもしれないからだ。
時間もかかるだろうが、焦って「同じくらいつらい思いをしている人もいる」「私もつらい」というような、絶望の否定をしないこと。

 

それから、医者に代わって「治療」をしたがる人の危険性について。
一緒にいる時間が長ければ話をすることも多いだろうし、医者より長い時間を共有することができる。話を聴いてくれるあなたに、患者がかなりの精神的な依存を強めてくることはあるだろう。しかしそれを権力として使ってはいけない。治療の司令塔になってはいけない。
また、あなたと相手は別の人間で、できることにも限界があることは提示しておいた方がいいだろう。依存させるだけさせておいて、それまでの医者から遠ざけ、治療を中断させるなどした後で手に負えなくなって放り出したとき、相手は着実に破綻への道のりを進む。最悪だ。

今回実際に行動に移し始めていた近親者がいたし、本人も治療への不信も口に出し始めていたのでヤバかった。

 

スポーツのチームであれば、監督は1人だ。観客が監督の采配に異議を唱える自由はあるが、選手席で監督をし始める観客がいたらヤバいでしょう。
司令塔が複数になることで選手は混乱する。もともとあった監督と選手の信頼関係が崩れ始めると、もはやチームとして成り立たない。

医療にも同じことが言える。医者と患者には信頼関係がなければ医療そのものが成り立たない。

「この薬は効いてないんじゃないか」「転院した方がいいのではないか」転院先を探して連絡してしまう人もいる。身近な信頼している人のそうした行動が、善意からであっても今までの治療をぶち壊しかねない。

 

繰り返しになりますが、本当に死にたい人に、速やかに効く特効薬はないです。身近な人はそばにいて離れず、話を聴く。これができること。

死にたい人に説教を始めたり、絶望の重い軽いなどのジャッジをしない。今のその人を否定しない。主治医ではないのに主治医になってはいけない。これがしてはいけないこと。

 

精神科の話になると必ず「日本の精神科は腐っていて信用できる医者に出会えない」「薬漬けにして話も聴かない」という意見がくる。わからんでもないが、主治医は24時間一緒にいられるわけじゃない。永遠に話を聴き続けることは不可能だし、それは医者でなく身近な人の役割であろう。それから、薬だけが治療ではない。むしろ薬は補助的なものであって、主たるストレスの排除であったり必要な支援が得られたり孤独でなくなったり、潰れる前にストレスから逃げることのできるスキルを身につける、そういったことなしにひたすら薬が効かないつうてもそら厳しいでよ、と個人的には思っている。

まぁそっちにいくと話がずれるのでまた何かの機会に。

 

今回、予期せずガチで「死にたい」と言われてまず動揺しまくった。行動したことは話を聴くこと。死にたいのは理解できるけど、生きていてくれて嬉しかったと伝えたこと。そばにいる人に、司令塔が複数になると混乱をきたすので、それはやめてほしい、ただそばにいてあげてほしいと伝えたこと。できたのはそれくらい。

最後に、これを書く前に複数の精神科医に話をきいたのだけど、「大事なもの、愛しているものを持っている人はね、死なないんですよ」と言われたのがいつまでも頭に残っている。

つまり、大事なものを持たない人は死んでしまうということで、死んでしまった人に遺された人は、「愛されていなかった」と一生傷を負い続けるのかもしれないということで。

まぁまとまりないけど、とりあえずやっちゃいけないことだけでも参考にしてもらえたら。

 

 

 

職場に子連れで行けるようになるのは望ましいだろうが、それが議会だとどうなのかと思ったこと

熊本市議の女性が乳児を連れて議場に入って退場を言い渡された件、妊娠中から子連れで議場に入ることや託児所の問題については提起していたものの、シッターを雇うなどしたらどうかと提案され、個人的な問題とはしてほしくなかったとのことなのだけど、善悪の問題ではなく、疑問に感じたこともいくつかあり。

 

子連れで出勤できる職場であってほしい
保育所の拡充を

 

ということはあまりみなさん異論がないと思うのだけど、
じゃあ預け先がない場合、何歳まで職場に連れて行っていいんだろうか。職場というか、議会に。

 

それと、市議会は年間100日ほどで、話題の議員は出産後ずっと欠席していたらしいのだけど、この方って天涯孤独な方なのかしら。
でも、最終的には知人に預けたとのことなので、それは可能であったということですよね。

よく女性だけで子育てしてるCMなど「夫は何してるんだ!」って炎上するけど、この方の夫っていないのかしら。


私自身は母親だけが育児をするのはいかがなものかという考えなので、夫が育休を取って妻が議会に出るということがあってもいいと思うのだけど。まぁ産後半年ちょいだし、無理して働かなくてもいいんじゃないか感もあるけど。

 

そして、お給与は熊本市議の場合、月に67万らしいのだけど、ただの一度もシッターを雇ったり、知人や家族に預けることもなく初めて出席したのが規定では許されていない子連れと。
みたら熊本市も保育園の空きはさほどなさそうですが、逆にその状態で市議のための託児所の方がやはり優先されるのかしら。
議員の場合は議会に出ないと給料が出ないというわけでもないみたいだけど。
そのへんが一般企業とは違うような。

 

人にはいろんな事情があるし、家庭環境もあるので個人のやり方に口出しするのもいかがなものかと思うけれど、公人としての問題提起なようなので、つっこまれるのは想定内だろうということで書いているのだけど。

 

例えば医師の場合、たまに子どもが医局にいることはあるのだけど、カルテなど個人情報の見られる区域ですし、違和感はあります。どの職場でも子連れでいいということにはならないでしょうね。
昔の上司の産婦人科女医は、夜中に緊急で呼ばれて子連れで出勤したが、子どもは看護師の控え室に転がされたままで、緊急事態だから当然面倒見る人がいるわけでもなく放置。
子連れ勤務が可能なのは、周囲に面倒の見られる人員がいるということが前提になるのだろうと思います。
子どもが保育園に入れない女医は子連れで仕事してるかというとそこはシッター雇ったりしていて。もしくは家族に負担かけるか自分の勤務を制限するないし数年休業。

 

議員さんを擁護している方たちは「職場のみんなで子育てするのはあり」という意見のようだけど、一般企業や学校ではあり得るとして、議会という場ではどうなんだろう。
規則だからダメと一律否定するのも、今後子育て中や妊娠の可能性のある女性は議員になる道が狭くなるわけで、そこは将来的に改善されるべきだと思うんだけど。何かしらの子連れルールは必要そうな。

 

まぁ、女性が多く想定されていない職場に早期に復帰する場合は相談先もなければバッシングも受けやすいし、ドンづまった結果、子連れで議論を巻き起こすしかないという何十年も変わらないままの社会情勢が浮き彫りになったなと思います。私含めて事情を知らない者にいろいろ勝手に推測されて書かれるわけだし。

性暴力を予防するための思春期の教育や対応

☆会場でのスライドをそのまま使うのはいかがなものかというご指摘をいただき、各みなさんに承諾をいただいております。

 

まずはじめに、榎本クリニック 斎藤さん。クリニックで加害者の治療に携わっている。
榎本クリニックは加害者の治療もしている精神科クリニック。

「性暴力の社会病理と予防教育」

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170827-00006568-bengocom-soci

ちょうど本を出したばかりなのですね。

この記事に、「長距離通勤者の属性考えたら当たり前だろう」というコメントつけている人も見ましたが、その方は治療に携わっているわけではないので、スルーでいいでしょうね。

実際治療にあたられている方は、本当の加害者像と被害者像を知ってほしいとのことでした。

 

 

一番多い性犯罪は痴漢である。加害者で一番多いのは四大卒の家庭持ち。そして、一般的に知られていないこととして、痴漢は勃起していない。原動力は今まで言われていたような性欲ではないのでは?という疑問が生じた。

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ほとんどの加害者は交番の前ではやらない。明らかに計画性を持ち、被害者を選別している。そしてスキルアップをしていく巧妙になっていく。性犯罪の90%は不起訴で、ほとんどが泣き寝入りである。ある調査では、1人の加害者が生涯の被害者の数は380人。逮捕されなければ行動変容は難しい。

 

加害者治療は、奈良の小1誘拐殺害事件から始まった。

 

刑務所から出てきてすぐに性犯罪を犯す現実。継続した専門プログラムは義務付けられていない。

 

リスクに応じたプログラムを編成し、受けてもらう。
加害者家族の支援は、ドロップアウト率に影響するため、家族の支援は大事

 

(まぁ理解が得られなければ縁切られてそうだけど、支援者がいないと再犯はしそう)。

 

変化させやすいリスクについて焦点を合わせる。生育歴など変化しないものには焦点を当てない

 

(今まで生育歴が犯罪を引き起こすように思われていたし報道もされてきたけど、変わりようのない過去のことに焦点を当てても何も変わらない。将来のためには修正可能なことについて何がリスクなのかを考えていくということである)。


文化や学習のスタイルなど、変化しやすいものからアプローチしている。
生育歴から性犯罪を行う者はわずか。生育歴が性犯罪を惹起するというのは「神話」である

(光市母子殺人事件なんかはそういう分析がされていたように思うけど)。

 

性犯罪の加害者は、継続してプログラムに参加し続ける必要がある。一生欲求はなくならないからである。


コーピングは大事で、別のことをすることで性犯罪に至る前に気づく、自制する行動。保冷剤を握るなどのセッションを行う。輪ゴムをはめておいたり、デスソースを舐める人も。
電車に乗るときは手袋をはめるのもコーピングである。痴漢は手袋をしない。感触が伝わらないからである。
自身のコーピングの開発が大事。嫌いなアロマオイルを持ち歩くなど。

ここで被害者に多い特徴だが、圧倒的に「逮捕されなさそうな人」。

 

(わかるわー!!!泣き寝入りしそうな人でしょ。だから学生とか幼児が選ばれるのだろうな)

おとなしい人が選ばれる。加害者が被害者を選ぶにあたっての最優先事項は、「逮捕されないこと」。

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続いて、佐賀県DV総合対策センター
原健一さん
性暴力被害者の支援と予防教育を行っている。

 

センターは、当時の知事の意向で作られた。都道府県で唯一の施設である。好きにやれと言われた

佐賀県知事グッジョブすぎない?全国的に賞賛されるべきじゃない?)。

中学生向けに資料作成。性犯罪は、法律で取り締まられているのは一部にすぎず、広義には女性の望まない性的な言動も含む。
(ハラスメントってやつですね)

カウンセリング29回分を公費でまかなっている。(いいぞ佐賀県!!!!)

 

新たな取り組みとしては男児の被害も対応し、口腔咽頭その他の性感染症の検査を始めようとしている。
後遺症のケアまではできていないのが現状。
今までに1220件に対応、60%が強姦被害。50歳以上でも幼少期の性犯罪について引きずっている人のケアをしている。

(性犯罪は魂の殺人と言われているが、一生にわたってその人を蝕み続けるということですね)

 

SNSで起こっている性犯罪は、悩み相談から会うケース。加害者は傾聴スキルがかなり高い。自分に惹きつけて犯行に及ぶ。
(保護者の方!!!!これ必修問題です!!!!)

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子どもは黙っているだろうと思われているのかも。
被害者は多重の被害を受けていることが多い。DV家庭など。
12~19歳までの被害者の事例。どの家庭もネグレクトや暴力を受けていた。

成人で被害に遭うのは、会社の飲み会で上司から呼び出されてレイプというケースがかなり多い。LINEで呼び出されるケース多し。

(上司とLINEで繋がるのは、LINEに限らずSNSでは極力繋がりたくないわ。公私混同してくるやつおるし)

SNSでは性的接触目的が90%。

(これも必修問題ですよ!!!!!!)

 

続いて、日赤九州看護大 永末美雪さん。吉村医院で仕事をしていた(個人的には吉村医院にはマイナスの印象しかないので、紹介のエピソードとしてこれはプラスな情報かなあ…という疑問が…)

性犯罪は、男性では幼児、女性では20代が被害者として多い。

(逮捕されないこととかが前提だとそういうことになるんでしょうかね。)


中学生のほとんどが性犯罪は自分に無関係だと思っている。自分の問題として考えられるように教育するのが予防。

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ここからは、質問とそれに対する答えなど。
痴漢加害のきっかけは偶然触れることで始まったり、あと他人が痴漢しているのをみて自分も、と始めたり、倒錯的なサイトを繰り返し見て実行に移すパターンも。あと、同じ駅で加害者と被害者が同じ駅で降り、そのままホテルに行ったと主張している人もいたが、加害者側からしか聴取していないので真偽のほどは不明とのこと。

 

AVは抑止力になるか?→加害者になっている人にはトリガーになるので抑止力にはならない。
治療に関わることで批判されることも多い。被害者からの批判もあるし、男性側からだと加害者になる可能性について認めたがらない、加害者性を認識することが大事。

(まぁ依存症という認識はまだまだ知られていないように思いますからの)

 

社会で認知されているのは、被害者は被害者らしくしろということ。先日、元TBS社員にレイプされたとしてジャーナリストの詩織さんが第1ボタンを開けて会見したことで、視聴者から大バッシングを受けた。そういうことが世間の被害者かくたるべし論を象徴している。

 

最後に座長80歳の締めの言葉、思春期の男子は性欲のかたまりである、昔は手を握るのにも苦労した、簡単に触らせてもらえなかった。イタリアではハグなどが当たり前、エスコートは腰に手を回す、それが当たり前。文化。痴漢や盗撮は日本の文化と言えるのではないか。

 

(そうなんですか…これはまあ、率直に言って So what的な感想しかありませんでした。文化は尊重するものと教えられてきましたし、イージーにボディタッチをする習慣の国々もあるでしょう。どちらかに合わせる必要はない、しかし強制はされたくない。触れられたくない相手にNOと言える私、NOと言われたら了承する私でありたいものです)。